森の小びと(ジョーイの旅)
大きな森の中にジョーイというやさしい小人が住んでいました。
ジョーイの仕事は他の小人たちと同じように鉱脈を掘ることでした。
彼は妻のリリィ息子のトム娘のカリンと一緒に、家族四人でとても幸せに暮らしていました。
ある日ジョーイは仕事帰りに見たことのないキノコを見つけ、ひと口食べました。
ん?・・・・・
あれ?・・・・・キノコはちょっとかわった味がしました。
毒キノコだったのです!
その日からジョーイは変わりました。
自分が誰だか分からなくなったのです。
あれほど好きだった仕事が面白くなくなりました。
今までの友人たちがうとましくなり、一人で過ごすことが多くなりました。
笑顔にあふれている家族にも、なぜかさみしく微笑むようになりました。
そして、ジョーイは夜な夜な娼婦のミーシャと戯れ、処女のカーナを犯し、
果ては人妻のモニカと駆け落ちしてしまいました。
でもすぐにモニカは、仕事もなく、お金もなく、住むところもないジョーイのもとを離れました。
ジョーイは一人で大きな森を抜け、どこまでも続く丘を歩いて放浪を続けました。
そして丘が終わる地点にある大きな切り株の上に座って
遠くに広がる大洋を来る日も来る日も飽きずに眺めていました。
ジョーイはこれからどうしていいのか分からなくなっていました。
ジョーイは自分が本当は誰を愛しているのか分からなくなっていました。
ジョーイは自分が生きている理由を見つけることが出来ませんでした。
何度目かの夜、突然まわりが明るくなりました。
ジョーイはびっくりして見回して、さらに驚きました。
星が降ってきたのでした。
それもジョーイを埋め尽くすほどの星でした。
ひとつ触ると楽しい気持ちになりました。
別の星を触れると幸せな気持ちになりました。
また別の星に触れると胸が一杯になりジョーイの目からたくさんの涙が流れました。
そして最後に、ジョーイは大声で笑っている自分を発見しました。
そうだ。あるべき場所に戻ろう!
そうだ。今このままの自分でいいんだ!
そうだ。自分の愛すべき者たちの住まう場所に帰ろう!
そうだ。自分をいつも愛していてくれる者たちと一緒に暮らそう!
長い放浪の末に星々に出会い、
ジョーイは自分の気持ちと自分の居場所を思い出したのでした。
そして、そこから引き返すために、ふたたび長い旅を始めました。
果てのない丘を歩き、
いくつもの森を抜け、
家族や友人たちの住む森に帰って来たのでした。
ジョーイはなつかしい森で愛する人たちと再会し、赦して抱き合い、末長く幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし♪
おしまい。
******** 森の小びとジョーイの旅 *******
羅王 作