ミュンヘン中央駅のビール
ツアーガイドの仕事が終ってミュンヘンからフランクフルト行きの特急ICEに乗るころは大抵夕暮れだ。
電車を待つ間、駅構内にあるホーム近くのインビス(立飲み屋)に立ち寄り、立ったままビールを飲むのが私の習慣だったが、妻もミュンヘンで仕事が終るとそこでビールを飲むのが好きだと言う。
当時30代半ばの妻は、ドイツでは多分20歳くらいに映っただろう。そんな童顔の妻でも労務者風のオジサンやゴツイお兄さんに混じって半リットル入りのグラスでビールを飲んで駅構内のインビスでくつろぐことが出来たようだ。
妻と私が好んだそこは、駅のアナウンスが大音量で響き、構内を人々がガヤガヤとせわしく往来する場所だが、果たして日本の女性がこういう場所でくつろげるものだろうか?
妻はある日そういうドイツ人感覚になった自分を発見して嬉しくなったと言ったが、日本では「女性がそんなところでアルコールなんて」と言われそうだ。
ドイツでは至って普通の光景なのに!
そもそも誰がどこでビールを飲もうが他人には関係ない話だ。
なのに日本の女性は「ランチを食べるのでも一人でレストランに入りにくい」という。なぜだろう?
どんな常識や思い込みがそれを女性らしくないと決め付けているのだろうか。
そこでハタと
「かわいい」という言葉に思い当たった。
ドイツでは「可愛い」はホメ言葉ではない。
女性に「かわいさ」は求められていないのだ。
スカートだってウーマンリブ以後履くことがなくなり、
ドイツ女性のスカート姿は本当に少ない。
履いているのは70代のおばあちゃんくらいだろう。
私は男性としてジーンズよりもスカートの方に大賛成なのだが・・・。
人の後ろに隠れて恥ずかしがって自分の意見が言えない女性はモテないどころか「頭が悪い人」と思われ社会性がないと判断される。ホームパーティで来客があったら女性が台所にこもって顔を出さないということはない。ちゃんと女主人としてホスト役を努めるものだ。
女性が可愛さや子供っぽさを求めるのは男のせいかもしれない。
我々男が「精神的に大人の男になれていない」せいだと言われると頭が痛い。
そういえば、日本の男女格差はジェンダーギャップの国際比較で100番あたり。先進国にしてはかなり立ち遅れている状況だ。
一説では、ある社会が「未開」かどうかは、
その社会に属する男女の服装や振る舞いの男女格差を観察すれば判明するという。
男女の格差が大きいほど未開だ。
たとえば、
髪の長さ。
声の高さ。
スカートやハイヒールなど。
離婚の慰謝料はどちらが払うかとか、
結婚式が盛大かどうかも大事だ。
チベットの山奥では結婚の祭りが村人総出で一週間続くらしいが、
ドイツでは市役所で届けを出し、友人たちに見送られてハネムーンに出るだけで小一時間という簡略な結婚もある。
どうも日本が未開でないとは言い切れない。
未開社会に生きていると思うとちょっと気分悪いが、ジーンズよりもスカートに賛成で、女性はやはりカワイイ方が良く、立飲み屋では男女共に堂々とビールを飲むことに賛成である。
ドイツに住んでいたときはビールばかり飲んでいたので、ミュンヘン中央駅を思い出すとお気に入りの濁ったビールを500cc入りのグラスで呑みたくなる羅王である。
羅王(^王^)ノ